さほらぼ　by　佐保建設　建築実例詳細　　日々を積み重ねて育つ幸福なくつろぎの場所「風景と一体...

　岡山市街地から車で１時間余り。最寄りのコンビニにも徒歩なら１時間、車でも10分はかかる田畑の一角に新居を構えたのは半年前。決して便利とは言えないこの地での平屋暮らしをあえて選んだのは、外出先では味わうことのできないくつろぎの時を存分に味わえる場所にしたかったからだ。内と外とを隔たりなくつなぐリビングの障子戸を開け放てば、正面にはまるで絵画のような借景の庭。リビングの大開口のほかにも、四方八方に散りばめられた小窓は心地良い光を取り込んで、時々刻々と過ぎゆく時を、風は新たな季節の訪れをそっと教えてくれる。
　四方に開かれた地の利を生かして北壁に設けたキッチンの窓の向こうには、小高い山の緑が萌える。ＬＤＫの大開口や洗面の収納には木の格子戸を設え、外からの視線を遮りつつ風の道を妨げないようにした。木の存在感を生かしつつ、決して和風建築然とした印象を与えないのは、樹種の選定や木幅、家具の造作一つにも細やかな配慮と吟味が重ねられているからこそ。今はまだ初々しさを残すナラの床も、暮らしを共にするうち艶を増し、美しいあめ色に変わっていく。そうして使い込みながらしっくりと暮らしに溶け込むこの家は、やがて周囲の自然とも一体となり、美しい風景を成していくだろう。急がずにゆっくりと、その幸福な経過を味わいたい。