さほらぼ　by　佐保建設　建築実例詳細　　周囲の自然に溶け込む庭でのびやかな平屋暮らし

　日々の暮らしの中ふと目を上げた先に、陽光を受けてさも気持ちよさげに揺れる草木を見ると、心が満ちていくのはなぜだろう。勝央町の外れにあるこの家は、ゆったりと空間を割いたLDK を中心に、４帖足らずの小さな和室と主寝室、ひと続きになった２室の子ども部屋を擁す平屋建て。一度は２階も検討したが、理想の暮らしを思い描いてみると、家族が集まるLDK さえ広々としていればなんら不自由はない。“我が家”らしさを追求するなら、固定概念に縛られる必要もないと思い直した。町が整備した新興住宅地の一角がゆえ、周囲には新築の家々が10軒余り立ち並ぶ。往来の視線を避けるために、LDK 正面の前庭はスギ板張りのコンクリート塀と木格子でぐるりと囲いこんだ。にもかかわらず豊かな大地を身近に感じられるのは、庭面に広がる緑が、周囲にそびえる山々へとその視線を誘ってくれるからだろうか。対面の窓外には柔らかな若木が風に泳ぎ、LDK 東側に配した和室の横にも坪庭が顔をのぞかせる。すかした窓から入り込むのは、サラサラと優しく揺れる枝葉の音と、ほのかに湿った緑の匂い。日中、子どもたちの無邪気なはしゃぎ声に彩られる縁側は、しっとりとした大人のくつろぎを漂わせる夜も、また心地よい。子どもたちが大きくなれば、家族の時間も少しずつ変化していくだろう。そうして次第に熟していく暮らしを、この庭とともに、急がずゆっくり味わってみたい。