さほらぼ　by　佐保建設　建築実例詳細　　自然の移ろいと共に 暮らしの未来を紡ぐ

　かつて出雲往来の宿場町としてにぎわった石畳の通りをわずかに逸れてこの家を見つけた時、ふと懐かしさがこみあげてきたのは、長い濡れ縁に田舎家の面影を見たからだろうか。開口は豊かに開かれても仰々しい外構はなく、この町に住み慣れた家人の大らかさが伝わってくる。数台分もある駐車スペースよりもさらに広い庭の随所には、新緑から青葉へと彩りを変えはじめた美しい山採りの木々。まだ覚束ない若枝を揺らすそのさまは、どこか家人に客の来訪を知らせようとしているようにも見える。2人の幼子を持つNさま一家の暮らしは、優雅にのんびりとはいかない。食事も掃除の頻度も大人ばかりの暮らしとは違うし、近くに住まう両親の助けがあるとはいえ、家事の最中子ども達から目を離すことはできない。けれど水仕事に立つキッチンからも、穏やかな寝姿を見守る和室からも目の届く庭の植栽は、そんな慌ただしい日々に深い安らぎをもたらしてくれる。無垢の床や控えめな設えに漂うやわらかな光は、豊かに心を温めてくれる。リビングソファで束の間の休息をとるその視線の先には、東美作路の名木・勝間田のカヤの木。紡ぎ続けた暮らしの先に実る美しい未来を思い、今日もそっと風に耳を澄ませている。