さほらぼ　by　佐保建設　建築実例詳細　　風景を受け継ぎつつ 次代をはぐくむ家

　かつて祖父母、両親が暮らした古民家２棟が両隣を囲む真新しい母屋。昭和風情の建物の狭間にするりと溶け込むのは、昔ながらの焼杉壁が古き良き時代の面影をにじませるからだろうか。早期退職したとはいえまだまだ“現役”の両親を迎える二世帯住宅。本来なら、２階建てを選ぶのが定石かもしれない。それでもあえて、Ｉさまご夫婦が子ども部屋のみを２階に配した“平屋”にこだわったのは、「シンプルな暮らしの中にこそ育まれる豊かさがある」と考えたから。普段は玄関を隔てそれぞれの暮らしを営むが、薪ストーブに火がともると三世代が自然とリビングに集う。ダイニング側面の造作シェルフは、祖母から子どもたちに贈られた絵本や写真集でたちまちいっぱいになった。スギの床や漆喰の壁など自然素材を多用した空間は、目の前の風景と溶け合いながら、日々の何気ない暮らしにそっと彩りを添える。空間を介し、風景を介し、心を介して刻まれるささやかな営みは、子どもたちのみずみずしい心に深いぬくもりの記憶を残していくだろう。