さほらぼ　by　佐保建設　建築実例詳細　　本物のくつろぎが宿る五感で暮らす家

　視線の先には、いつも風景がある。それは自然であったり、物であったりするかもしれないが、目に映るものが何であってもやはりそれは風景だ。そんなことをふと思ったのは、この家が、どこを切り取っても美しい風景画のように見えてしまうからかもしれない。田園風景に溶け込むこの家は、子ども部屋2室を擁した2LDKの平屋建て。LDKの一角には１坪ばかりの書斎もある。差し込む陽光が薄いシフォンのフィルターに通されたかのように柔らかく上品なのは、低く抑えられた天井のせいだろうか。照明はダウンライトがメインだが、夜に書きものをするなら小さなスタンドを置けばいい。必要なところに必要な分だけ。そのミニマムさが、カラダのネジを緩めていく。要望はあまり多く出さず、各部屋の広さやデザインまでほぼすべてを「佐保建設」に任せたのは、正解だった。例えばLDKに溶け込む畳スペースは、数々の暮らしを見つめてきたプロならではのアイデアだ。イメージしたのは、クッションひとつ携え畳の上にごろりと寝ころぶ心地よい時間。けれど現代において、確かに、和室をわざわざ設ける必要性は小さい。さらに特筆すべきは庭と家具。家づくりとなるととかく“箱” にばかり専心しがちだが、暮らしの完成度を左右するのはむしろ、そこに繋がり合う全体の印象だ。その地の風土を感じさせる庭と、暮らしを紡ぎだす家具たちによって、この家はさらに完璧な風景を描き出している。