きなりの家 株式会社　建築実例詳細　　内と外とが繋がり合う心地よき無垢の家

　「美しく心地よい木の中に暮らしたい」――。両親から受け継いだ田園の一角に家を建てることを決めたとき、Kさんには、無機質な鉄筋に組み上げられた箱の中での暮らしはとても想像できなかった。周囲は数キロ先まで見渡せそうな、のびやかな田園地帯。こんな場所には、昔ながらの工法で建てられた無垢の家こそふさわしい。「『き』なりの家」に魅かれたのは、上質で美しい木の趣を存分に味わいつつ、周囲の環境に溶け込み、現代の暮らしになじむ空間が実現できると感じたからだ。１階は薪ストーブを配したリビングを中心に、大きな吹抜けにこだわって、和室からキッチンまでひと目で見渡せる。庇をデザインした開口から、冬はたっぷりの陽光が差し込むので、日暮れ間際まで照明の灯りを借りる必要はない。奥さまの家事動線に配慮し、水回りはキッチン背面に集約。階段下にキッチンから和室に向かって通り抜けられるパントリーも設けられた。印象的なのは、階段格子から南面の開口部までをぐるりと囲う太い梁。導かれるまま目を泳がせると、その視線は自然と板張りの軒下へと向かい、この家の内と外とが緩やかに繋がり合っていることを実感させてくれる。揺らせるほどの植栽は、間もなく緑豊かな垣根となってのびやかな自然の風景に溶け込んでいくだろう。土地に息づく心地よさと、機能的な暮らしよさ。どちらも兼ね備えたこんな住まいなら、紡がれる幸福をゆっくりと味わえそうだ。