株式会社 なんば建築工房　建築実例詳細　　家族の絆を育む一室多層構造の家

　『家族の集う家』をコンセプトに設計したというMさん邸。内部の空間を見れば、まさに「ひとつ屋根の下」という言葉が浮かんでくる。長大な縦横のスパンをケヤキの太梁が組み合って支え、屋根の形をそのまま現した勾配天井が、ダイナミックに頭上を覆う。その下にほぼすべての居住空間がひとつながりに配置され、家族はどこにいても気配を感じ合って過ごすことができる。
　1階にリビング、2階にダイニング、さらに数段上にファミリースペースを設ける多層構造。共働きしながら3人の子育てをする毎日は忙しく、家族全員が集う時間は実際とても少ない。だからこそ、食事の時、子どもと遊ぶ時、ご夫婦でくつろぐ時と、それぞれ場所を移ることで「用事をしながらではなく、お互いにきちんと向き合う濃い時間がつくれる」という。天井高6mのリビングは、ソファに腰掛けると窓に映るのは空と庭の緑だけ。アウトドアレジャーの好きな家族のため、いつでも自宅でその気分が味わえる、陽光の降り注ぐ空間がつくられた。
　一方、玄関は静謐な和の佇まい。梁組みとともに、職人たちが継承してきた伝統建築の技の光る箇所だ。天井は低く、ほの暗い中に上質なケヤキの框が艶を放つ。そこから一気に明るくモダンなリビングへと開放していく対比の妙は、いつでも新鮮な驚きをもたらしてくれる。家族が朝それぞれの場所に出かけていき、夜にはまた集い合う、そのたびに「我が家っていいな」と思わせてくれるあたたかな住まいだ。