株式会社 セントテ　建築実例詳細　　シンプルな形の中に広がる、あたたかな暮らしの余韻

　広々とした田んぼが少しずつ宅地に変わりつつある、福山市郊外の地。小さな2人の子どもたちをもつＴさんも、こうした新しい団地の一角に、これからの暮らしの場を求めた。
　依頼したのは、見学会に行って以来ずっと心引かれていたという「株式会社 セントテ」。Ｔさんはたくさんの参考画像をピックアップし希望を伝えたが、期待以上のプランが提案された。隣家が接する団地の中であれば通常は閉ざされた空間となりがちだが、「セントテ」の持ち味のさりげない抜け感や陰影のある雰囲気にまとめられた。
　薄いグレーの三角屋根の外観は、Ｔさんが思い描いたイメージの通り。軒のないすっきりとした２階建てに四角い小窓が点々と開く姿はごくシンプルだが、どことなく愛らしくもある。その印象は室内にも自然と続いており、無駄のないつくりの中に、家族のあたたかな気配が満ちている。気持ちの良い吹き抜けのリビングは一部がダウンフロアとなり、傍らの掃き出し窓にはオリジナルの木製建具が使われている。建具の桟のデザインは一見何気ないように見えるが、実は極めて洗練されたもので、これによって窓辺の風景はいっそう趣深いものとなっている。
　機能面に関しては洗濯機を2台置く必要があったため、水回りの配置は試行錯誤したが、南側に独立した洗濯室を設けることによりすべて解決できたそう。また、タイルや階段手すりなどの各所はグレーで揃えられ、全体の統一感が図られている。
　建物が完成し、最後に芝生の庭をあつらえると、住まいは格段に豊かさを増し、目指す形にしっくりとまとまったという。周りを囲む塀は低く抑えて内からの視線を抜き、ミモザの若木が外からの視線を柔らかく遮る。庭で仲よく遊ぶ子どもたちの様子に明るい庭の景色がよく似合い、ご夫婦はそろって目を細めていた。