株式会社 平田建設　建築実例詳細　　〝余白”を味わい “育つ”を愉しむ家

　手に入れたのは、新興住宅区域の一角にある扇形の変形地。当初目星を付けていたのは整形の区画だったが、そこに一足早く買い手が付いたことがかえって奏功した。曲線道路と細い水路に囲まれて壁を接する家は一軒もない。北東に膨らむ敷地は内外の動線をのびやかに広げ、２階の高窓はパノラミックな町並みを悠々と映し出す。立地の恩恵をさらに豊かに広げてくれるのは、高窓と２階寝室との間に設けた吹き抜けだ。冬はたっぷりの自然光が陽だまりをつくり、掃き出し窓から入り込む風は夏の熱気もすっかり北窓へと押し流してくれる。眼下を見渡せば、半年掛かりで完成させた手製の庭からウッドデッキ、リビングへと縦横無尽に駆ける子どもたちの姿。育児に追われる日々は目まぐるしく、休日も腰を据えてくつろぐ暇はほとんどない。けれどだからこそ、庭の若木が道なりに枝葉を広げ、今はまだ初々しく白む床のオークや天井のツガの天井が日に日に艶やかに味わいを深める様が、家族の記憶とともにいっそうみずみずしく刻まれていく気がしている。