木造ホーム 株式会社 小川建美　建築実例詳細　　山里の風景に調和して低く佇む平屋の家

　建てて２度目の春を迎えたＯさん邸。木々や草花がいっせいに芽吹き、みるみるうちに新緑に包まれていくさまを、この春奥さまは日々つぶさに見ながら過ごしたという。長らく多忙な毎日を送ってきたＯさん夫婦だが、出産を控えて家にいる時間が増えた今、改めて感じるのは「庭のある暮らしの豊かさ」。「『そろそろこの花が咲くかな』って心待ちにしたり、初なりの実を見つけたり。そんな一瞬で見逃してしまうような季節の変化に気づける喜びを感じています」と、奥さまは微笑む。山裾ののどかな風景の中に建つ家は、外からの視線を気にせず開け放して暮らせる。外とつながらない家はこの地に似つかわしくないとの考えから、敷地を囲む塀は胸元ほどの低さに。ダイニングから見るとその塀がちょうど道のアスファルトを隠し、庭と、背景に広がる野山とを一体に見せてくれる。通りからの視線は植栽がほどよく目隠ししながら、庭にいれば近所の方が塀越しにちょっと覗いて声を掛けてゆき、そんなやりとりもかけがえのない暮らしの楽しみとなっている。さまざまな樹種を取り交ぜた植栽は、四季のうつろいとともに順番に葉を茂らせ、花を咲かせる。初めは気負いが先立っていたという庭の手入れも、１年が過ぎてわが家なりのペースができ、のんびりと愛着をもって庭での時間を楽しむようになったとか。住み慣れるほどに、家と、庭と、暮らしとがゆっくりとなじみ合い、住まう喜びはますます深まっていく。