株式会社SANKO　建築実例詳細　　立地の不利をも覆す自然素材と高性能の家

　玄関ドアを開けた瞬間、体の節々が一瞬にして緩み解けるような開放感に、思わず息をのんだ。目の前には、ひと部屋分ほどもありそうな広々としたエントランスホール。艶やかなあめ色の床は、窓から差し込む光の筋に誘われるように、そのまま北に向かってすらりと伸びていく。緑豊かなロケーションに建つＮさん邸は、ご夫婦で営む事業所の上階にある。線路沿いという立地ではあるものの、想像した騒音・雑音がまったく聞こえてこないのは、徹底した気密・断熱工法の“副産物”だろうか。代わりに室内を包み込むのは、心地よい木の香り。節なしの地松を使った玄関框や経年変化によってほどよく色づいたアメリカンブラックチェリーの床など、室内は多種多彩な無垢材の表情に彩られ、南に向けて大きく開かれた開口の先には緩やかに連なる山々の緑も映り込む。壁はもちろん漆喰塗。テレビボード背後の一面のレンガブロックが、ナチュラルな中にもモダンな印象を醸している。ここに暮らして一年余りが経つご夫婦が何より気に入っているのは、暑さ寒さに悩まされなくなったことだ。初めての夏を過ごした昨年は、広いリビングでも１台のエアコンで十分快適に過ごすことができた。共働きで慌ただしい毎日を送るご夫婦が平日自宅で過ごせる時間はそれほど長くない。けれど「だからこそ、家でゆっくりと過ごせる時間が最高に幸せです」と、奥さまは満足げに笑みをこぼした。