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初めての家づくりガイド 4 構造・工法

多様化する家の仕組み。代表的な構造・工法の種類と特徴を理解しておこう。

もっとも適した構造・工法を見極める

構造とは建物の骨組み(躯体)のこと。使われる主な材質によって分類され、一般的には、木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造などに大別されます。また工法は建てる方法のことを指します。大きくは軸組工法と壁式工法に分かれ、これに材質別の構造が加わって細分化されます。たとえば材質が同じ木(質)造であっても、木造軸組工法もあれば、壁式工法のツーバイフォー工法や木質パネル工法もあります。工法には各々特徴があり、工期やコストにも違いがあります。また最近ではオリジナルの工法を取り入れたり、各社独自の呼び方をする場合もあり、その内容は多様化しています。それぞれの特徴を知り、適切な選択をすることが必要です。また依頼先が設計事務所や工務店となる場合、会社によってすべての工法に対応するところと、一定の工法のみで対応するところがありますので、あらかじめ確認しておきましょう。住宅メーカーの場合は、扱う構造や工法の種類が決まっています。メーカー選択の際には、デザインや機能性ばかりではなく、構造や工法にも目を向けることが大切です。

木造

木の「軸」からなる木造軸組工法

木造軸組工法は、日本で昔から採用されてきた一般的な工法です。基礎に土台をのせ、その上に柱を立てて、梁や桁といった横に架ける部材を組んで骨組みをつくり、斜めに入れた筋交いなどの木材で補強します。部材同士の接合部分を仕口、部材の長さを増すための接合部分を継手といい、これらの複雑な加工には職人の熟練した技術が必要です。しかし最近では、コンピュータ制御によって完全機械加工されたプレカット材や、仕口部分の強度を補う金物を使用するなど、精度のばらつきを解消するためにさまざまな工夫が凝らされています。

最大のメリットは柔軟な対応力

木材は鉄やコンクリートに比べて軽いため、建物自体の自重が軽くなり、地盤への負担も小さくなります。また加工が容易でフレキシブルな間取りやデザインにも対応できます。木造軸組工法の大きな特徴は、構造的制約が少ないため、条件に応じて間取りが柔軟に対応できること。柱や梁を組んだ骨組みが基本となるので、筋交いの入った壁を除いて、自由に開口部を設けることができ、増改築しやすいのが魅力です。また、性能面における弱点や、複雑で手間のかかる工法を見直す動きも盛ん。高い気密性と断熱性を確保するために外断熱を採用したり、壁面強化や工期短縮を目指して工場生産した筋交い入りのパネルを用いる「木造軸組パネル工法」を開発するなどの動きが見られます。

木造軸組工法の現場の流れ

まずはじめに基礎コンクリートの上に土台を敷いていきます。次に柱を立て、梁をわたし、小屋を組んで、最後に棟木があがったら骨組みのできあがりです。この工程を建て方といい、この日のために、現場とは別の場所で、刻みといわれる木材の加工が進められています。骨組みが完成したら屋根工事が始まり、次いで窓や外壁の下地工事へと進みます。続いて床や壁、天井などの下地部分の工事となりますが、最終的に仕上げで隠れてしまう電気の配線工事や水道の配管工事などが途中に入ってきます。その後、内部造作工事へと続き、この工程が終わると大工仕事はほぼ終了で、仕上げの各職人によって家が完成されます。

「面」で家を支えるツーバイフォー工法

角材の断面寸法が2インチ×4インチであることから名付けられたツーバイフォー工法は、同じ木造でも前述の軸組工法とはまったく異なる仕組みを持っています。2×4インチの角材を主に使用して枠をつくり、合板などの面材を張ってパネル化します。このパネルを組み合わせた6面体の箱形を1単位として躯体を組み立てるため、日本の法律上の名称では「枠組壁工法」と呼びます。このパネルが耐力壁となり、建物全体にバランスよく配置することで、地震や風圧、屋根の荷重などに耐えられるようになっています。このほか2×6インチ、2×10インチの角材が用いられる場合もあります。

工期が短く設計の自由度が高い2×4

柱の出ないすっきりした大空間が容易につくれ、設計の自由度が高い工法。台風や地震などの外力も、6面体のパネルに力が分散されて負担が集中しない仕組みになっています。施工にあたっては、構造特性を損なわないよう、耐力壁や開口部の位置から、釘の種類や数、打ち方に至るまで細かく規定されています。また現場での加工作業が徹底して省力化され、構造体も仕上げですべて隠れるため、施工がしやすく、工期を短縮できるのが大きな特徴。軸組工法のように熟練した経験を必要としないので、品質も比較的安定しています。ただし増改築については、耐力壁の量やバランスを考慮する必要があります。

ツーバイフォーの現場の流れ

軸組工法と同様、基礎工事のあと土台の据えつけから始めます。次に1階床の枠組みをつくり、面材を張りつけてパネル状にします。この床面が、次の壁枠組み(壁体パネル)をつくるための作業台になると同時に、原寸の製図台としても使われます。この合理性が、工期を比較的短くする理由です。また壁枠組を建て起こす順序も同じように合理的に考えられています。1階を組み立てたら、2階も同じように組み、最後に小屋組を完成させたら構造体ができあがります。その後、屋根工事や外部建具の取り付けに入り、次に天井下地、配線・配管工事、内壁の石膏ボードの貼り付けと続いて、造作工事や内・外装の仕上げで建物が完成します。床、壁、天井などの「面」をあらかじめ工場で生産、パネル化して、現場で取り付けるメーカーも増えています。


工法 特徴
木造 木造軸組工法 柱、梁、土台を木の軸組で構成する工法。開口部が大きくとれ、増改築にも対応しやすい。さまざまな立地や敷地条件に対応でき、自由度も高い。
木造軸組+パネル工法 軸組工法の設計の自由度を生かしながら壁式工法の長所である高い気密性も実現。より頑丈な構造体をつくりあげることができる。
2×4工法(枠組壁工法) 枠組材と構造用面材により6面体を構成した壁式の工法。プレハブ方式のツーバイフォーユニット工法もある。
木質パネル工法 2×4工法と同様、耐力壁で建物を支える工法。木質パネルそのものが耐力壁を構成。木質系プレハブ住宅や一部の輸入住宅に採用されている。
鉄骨造 軽量鉄骨軸組工法 軽量鉄骨で柱、梁、土台などの架構をつくる工法。地震や風による水平方向の外力から建物を守るために、筋交い(ブレース)が必要。
軽量鉄骨パネル工法 軽量鉄骨で軸組を構成し、面材を張ったパネルを組み合わせる工法。鉄骨系プレハブ住宅の代表的な工法になっている。
軽量鉄骨ユニット工法 部屋またはスペースの一部など構造的に自立した鉄骨造のユニットを工場で生産し、これを現場で組み立てる工法。
重量鉄骨ラーメン工法 中・高層の建物に多く見られる工法で、材と材が剛接合によって固定されているのが特徴。大空間の確保や内部間仕切りの変更が容易。
鉄筋コンクリート造 ラーメン工法 鉄筋コンクリートの柱と梁で構成されている工法。設計の自由度が高く、広い開口部や大空間も可能。
壁式工法 室内に柱や梁が見えないので、実質的に部屋が広く使え、遮音性が高い。主に低層の戸建て住宅に用いられることが多い工法。
プレキャストコンクリート
(PC)パネル工法
工場生産されたコンクリートパネルを現場で接合する壁式工法。コンクリート系プレハブ住宅に採用されている。

鉄鋼造

あらゆる用途・規模への対応が可能

主要構造部分に鉄骨を使用する鉄骨(S)造は、低層から高層までさまざまな用途・規模の建物に用いられます。使用される鋼材は、製鉄メーカーで品質管理されたJIS規格品で、強度や性能が均一で安定しています。これらの鋼材は、設計図にあわせて長さや仕口が工場加工され、現場で組み立てられます。鋼材には、重量鉄骨と軽量鉄骨があり、それぞれ形状や厚さが異なります。工法は多種に及び、木造軸組の木を鉄骨に置き換えた軸組工法や、鉄骨で組んだ枠にパネルを組み合わせたパネル工法、それらを融合させた併用工法などがあります。外壁パネルは、木質不燃パネル、ALCなど軽量気泡コンクリートパネル、さらにメーカー独自で開発したパネルなどかなり多彩。

写真

高い品質とダイナミックな空間が魅力

鋼材は工業製品であるため品質の安定性と信頼性が高いうえ、鉄筋コンクリートに比べて安価。さらに工期も比較的短いのが特徴です。専門の構造設計が必要ですが、木造に比べて強度が高いため部材の断面が小さく、また柱と柱の間隔を大きくとることができるので、ダイナミックな空間構成が可能。増改築も楽に行えます。ただし、本来鉄骨は火災時の温度上昇によって強度が落ちたり、変形しやすく、また酸化による錆の発生は避けられないため、適度な耐火被覆と防錆処理が必要です。

鉄筋コンクリート造

互いの弱点を補い強度を増した構造

鉄筋とコンクリートが一体となって建物を支える構造を、鉄筋コンクリート(RC)造といいます。圧縮力に弱く引っ張る力に強い鉄筋と、引っ張る力に弱く圧縮力に強いコンクリートの特性を一体化することで、互いの欠点を補い、より高い強度を生みだしています。工法としては、柱と梁で組み立てるラーメン工法と、壁と床で組み立てる壁式工法があります。

●ラーメン工法

ラーメンとはドイツ語で、部材の各接点が剛に接続されている骨組みをいいます。柱と梁からなる構造で、間仕切りや大きな開口部を比較的自由に設けることができるというメリットがあります。一方、柱や梁が大きいため、室内に露出し、インテリアに影響を与える場合があります。

●壁式工法

文字通り、地震や風圧、屋根の荷重などを壁が支える構造です。柱がないのでインテリアがきれいに納まりますが、壁の量によって建物を支えているため、開口部の取り方が制約されます。増改築時の間仕切りの変更も限られています。

施工管理と養生期間がポイント

コンクリートは型枠の形状によってどんな形も可能な柔軟性のある材料。この構造も専門の構造設計が必要ですが、耐震性や耐火性、遮音性などに優れています。施工は、現場で鉄筋を組んで型枠を設置し、コンクリートを打設します。施工がよくないと、ひび割れによる雨水の浸入を助長し、コンクリートの強度を弱くしたり、内部の鉄筋を錆びさせ、鉄筋の腐食を招いてしまうなど、施工の良否が建物の強度や寿命に影響を与えることがあるので、施工管理が重要になります。またコンクリートは、打設から硬化して強度がでるまでに日数がかかるので、工期は他の工法に比べて長め。天候の影響やコンクリートが固まるまでの時間(養生期間)を考慮して、工期には十分余裕をみておきましょう。また鉄筋コンクリート造による住写真提供/(株)丹羽建築設計事務所宅は一般に、自重が大きいため、木造建築よりもしっかりした基礎が必要です。地盤の弱いところでは補強にかなりの費用がかかる場合もあるので、注意が必要です。

プレハブ住宅

プレハブ住宅とは、現場での作業を前もって工場内で行うプレファブリケーションの手法を取り入れた住宅のこと。あらかじめ工場生産された部材(床、壁、天井など)を現場に運んで組み立てるため、工業化住宅や工場生産住宅とも呼ばれます。構造上の安定性、耐火性や耐久性まで幅広く審査されるうえ、現場での手間が他工法に比べて少なく、工期が短いのが特徴。主要な構造体の材質によって、木質系、鉄骨系、コンクリート系に大別されます。また工法別に分けると、柱と梁を使う軸組工法、建物を壁パネルで支える壁式(パネル)工法、その併用工法のほか、工場内であらかじめ仕上げに近い段階までつくりあげられたルームユニットや設備ユニットを現場で組み上げて完成させるユニット工法があります。工場生産率80%以上といわれ、プレハブ住宅のなかでも工期が短いうえ、仕上がりにばらつきがなく品質が安定しています。最近では、プランの自由度も高められ、高級仕様のものも登場しています。

プレハブ住宅材質別の主な種類
木質系
木質系の材料で、床や壁、屋根を組み立てるのが木質系プレハブ住宅。構造形式としては、木材で組んだ枠に断熱材を充填して合板などの面材を張ったパネルを工場生産し、それを現場に運んで組み立てるパネル工法が主流。ほかに、パネルに軸組を併用したものもあります。耐力壁で荷重を支えるため構造はシンプルで、気密性・断熱性が高く、地震などの外圧に変形しにくい堅牢さも魅力です。
鉄骨系
鉄骨系は主に軽量鉄骨を骨組みの材料とした住宅。構造形式には、軸組工法、パネル工法、それらの併用工法、そして工場生産したユニットを現場に据え付けるユニット工法などがあります。一般的には、木造軸組と同じく、鉄骨製の柱と梁、さらに筋交いに相当するブレースで構成する軸組工法が主流。軸組工法は設計の自由度が高く、パネル工法は軽量構造が特徴です。鉄骨の欠点である錆や腐食に対しては各社とも独自の防錆対策を施しています。
コンクリート系
工場でつくられ養生したコンクリートパネルを現場で組み立てて床、壁、天井を構成します。メーカー独自で開発したコンクリート部材「プレキャストコンクリートパネル(PC板)」を使用するものが一般的ですが、「ALC板」という軽量気泡コンクリートパネルを採用するものもあります。現場打ちのコンクリート住宅(RC造)と比べると、造形的な自由度は少ないものの、工期が大幅に短縮され、生産時の管理が行き届くので品質が安定しているのが特徴。耐震性、耐火性にも優れています。