さほらぼ　by　佐保建設　建築実例詳細　　日常の合い間に息づく 非日常の雅やかな時間

　朝霧でほの白んだ外気の向こうに、ゆったりと波打つ山の稜線。昇りくる朝日とともにその輪郭が浮かび上がり、新しい一日の訪れを知らせてくれる。新興住宅地として整備されたこの周辺には真新しい家々が立ち並び、スーパーやコンビニも散歩がてらというにはどこか物足りないほど近い。それにもかかわらず、この巧みに切り取られた開口が映し出す朝の気配は、いつの日もどこか人里離れた山裾の地で見るそれのように、凛としてすがすがしい。
　無論、子育て真っ只中のご夫婦に優雅な朝をゆっくり味わう余裕があるわけではない。子どもたちが目を覚ませば平穏な空気はたちまち活気を帯び、日暮れまで途切れることなく日常が押し寄せる。キッチンから洗面、ウォークインクローゼットを抜けて玄関へ続く回遊動線や造作のスタディスペースが助けになっているとはいえ、腰を据えてゆったりくつろげる時間はほとんどない。だからこそ、ふと視線を上げた瞬間に眼前に広がるこの美しき世界が、つかの間の安らぎをいっそう心地よく深めてくれるのだ。