株式会社 デザイナーズハウス木屋 一級建築士事務所　建築実例詳細　　くつろげて、楽しめるふたつ...

　専門的なあれこれは知らずとも、ここの主人が音楽をこよなく愛する人であることはひと目で分かる。LDKには大きな木製スピーカーが2台堂々と腰を据え、ダイニング脇の書斎からのぞく幾枚ものCDは、その奥をあふれんばかりの音源が占拠していることをうかがわせる。一方、対面の棚にはいかにもこだわりのありそうな時計や雑貨がディスプレイされ、西手の土間スペースには美しく手入れされたバイクも鎮座。どれほど時間が有り余っていても退屈することは決してないだろう、広く奥深き趣味の世界が広がる。一方奥さまが望んだのは、とにかく静かにくつろげる場所。共働きで日々忙しく立ち回る奥さまにとって、自分の時間は家事の後のわずかなひとときばかり。せめてその時間は、好きな読書にふけりたい。そんなご夫婦の相反する想いを受けてデザインされたこの家は、シンプルな箱型の外観からは想像もつかないほど自由で個性的だ。吹き抜けを上がるようなリビング階段は2階部分がぐるりと筒状に壁で囲われ、扉を閉めると2階は丸々独立した空間になる。四角いドーナツ状の廊下を歩くと、寝室や未来の子ども部屋が扉を構え、一角には開放的な多目的スペースも。ご主人がリビングでギターを鳴らしはじめても、ここならのんびり本の世界に没頭できる。日々の暮らしを行き交う「静」と「動」。それぞれを巧みに住み分けられる空間が、ふたつの個性をより豊かに折り重ねていくのだろう。