株式会社 イチマルホーム　建築実例詳細　　通りからの視線を遮りつつ 内からの視界は広がる家

　リビングのソファに腰を下ろすと、表の景観からは想像もできない大らかな開放感が包み込む。すがすがしい陽光は広いウッドデッキを隔てた室内まで入り込み、天井ファンのせいだろうか、窓を閉め切っていてもやわらかな空気の対流が感じられる。Ｙさまご夫婦が家づくりを考えはじめたのは、今はやんちゃ盛りの長男が生まれる直前。家族が増えるのに備えて効率的な家事・生活動線と十分な収納力は必須だったが、かといって子育てが一生続くわけでもない。合理性を追求するあまり、ありきたりな住まいになってしまうのは避けたかった。理想は、和にも洋にも偏らない、暮らしの変化をしなやかに受け止める普遍的な空間デザイン。そんなＹさまご夫婦のオーダーを、丸ごと受け止めてくれたのがこの家だった。キッチン、バス＆サニタリー、クローゼットを北東にＬ字に配した家事空間に対し、南の庭面とゆるやかにつながり合うリビングは、まるで半屋外にいるかのような心地良さ。回遊性を持たせつつ動線と設えの妙で暮らしの中のオン・オフを巧みに操る空間は、同時に家族それぞれの営みを心地良く重ね合わせてもくれる。無垢の床が艶やかに色づきはじめる頃には、まだおぼつかない庭の植栽も小さな命もたくましく膨らんで、豊かな実りを楽しませてくれることだろう。