株式会社 イチマルホーム　建築実例詳細　　天井高低差で　視界を操る家

　新年度を迎えて初めての休日。誰もいない静かな校庭に惜しげもなく咲き乱れる桜並木の真正面に、件の家はあった。建て主は、子育て真っ只中の30代夫婦。２歳と４歳の息子たちから片時も目が離せない時期は過ぎたものの、子ども中心の慌ただしい暮らしはまだ当分続くだろう。そんな夫妻がこの家づくりでこだわったのは、家事動線。中でも肝いりは、階段下を使用した２畳近くのウォークイン。サニタリーに隣接しているので、洗濯から片付け、着替えまでのすべてがこの一帯で完結。キッチン側とサニタリー側、２カ所から出入りできるので、入浴中の家族に気兼ねする必要もない。空調効率上ＬＤＫの吹抜けは断念したが、天井面積が広がった分、キッチンに折り下げ天井、ＬＤに間接照明を実現した。意外だったのは、天井高を下げたはずのキッチンからの眺めが想像以上に開放的だったこと。キッチンとダイニングの間で約20センチ、ダイニングとリビングにはそれ以上の天井高低差がある。その空間変化が自ずと視界を膨らませ、憧れの“吹抜け感”を演出しているのだ。家づくりは選択の連続で、何かを選ぶために何かを諦めなければならないこともある。それでもこの住まいに後悔が残らないのは、取り込みきれなかった想いが別のカタチでしっかりと反映されているからだろう。「外出しても、早く家に帰りたくって」と話す奥さまの隣で微笑むご主人が、どこか誇らしげに見えた。