株式会社 セントテ　建築実例詳細　　中庭を囲む平屋

　車の行き交う国道沿い、低く地に伏すような平屋の家。曖昧にくすんだグレーの外壁が、街の喧騒にも、背後の山や空にも溶け込む。無駄のない、シンプルな佇まいでありながら、ふと目を引き付けられる一邸だ。
　施主のKさんご夫婦は、小さな子どもを育てながら忙しい日々を過ごす。住まいに求めたのは何よりも安らぎであり、ご夫婦の間でごく自然に、落ち着いた和を感じられる家のイメージにまとまったという。ご夫婦の思いを十分に汲み取ってくれた「セントテ」と始めた家づくり。幹線道路に面した敷地条件から、表を閉じつつ家の中に光を取り込む中庭がプランの軸になった。「家の大きさに比べて、贅沢な中庭ですよね」と奥さまは笑うが、そのゆとりこそが住まいに大きな価値をもたらすことを、ご夫婦は十分にわかっていた。
　室内は深い色合いが調和する、落ち着いた雰囲気の空間。お気に入りの家具に合わせた濃いウォルナットの床と、まっ白ではなくあえてワントーン落とした珪藻土の壁が、くつろいだ雰囲気を生む。担当スタッフが特に心を砕いたのは、「和」の要素に偏りすぎない微妙なバランス。キッチンなどの造作物や建具などは何風にも偏らないニュートラルなデザインとし、障子や千本格子といった純粋な和の要素については、桟の細さや間隔まで熟慮を重ねることで「セントテ」らしい洗練された空間をつくり出した。
　基本的な要望以外はスタッフに任せたところも多かったというが、どんな細部にも丁寧に向き合い、「まさにこれ」というかたちに仕上げてくれたという。例えば玄関引き戸の把手やレール、中庭の雨どいなど、見過ごしてしまうような場所にさりげなく上質な素材が使われ、きちんと手間ひまがかけられていることがわかる。「そういうなにげないところに、なんとも言葉にできない魅力を感じるんですよね」と奥さまは語り、これから始まる暮らしに想いを馳せた。